介護の現実

今や常に話題に上がる介護の話。
正確には介護問題。実はほんの1年前は、他人事だったわけだが・・・。

関西の田舎に住む87歳になる母親が、歩けなくなったのは今年の正月明け。
年始に私は実家に帰り、杖をつきながらも外出することを楽しみにしている彼女を車に乗せ、
回転寿しで楽しく食事をした。
「まあ、今年も元気でなあ、今度帰った時は回らない寿司屋に行こう」
とたわいもない会話をして実家を後にしたのだった。

それから一週間後、弟から連絡がはいる。
「母親が歩けなくなった」と。
そこから私の、いや我が家の「介護問題」は始まった。
なによりも問題は、母親の面倒を誰が見るか。
母親と一緒に住んでいるのは弟の妻と中高生の子供たち。
弟は単身赴任で実家を離れ関西の都市で暮らす。
週末はなんとか実家に帰れるものの平日は基本無理だ。
東京で暮らす私などひと月に1回帰れればいいほうだ。
とはいえ、実家で母親の面倒を彼女一人に負わすわけにはいかない。
もちろん介護ということで、ヘルパーさんも週1日来てくれているらしいが。

車いすイメージ01 ※イメージです。

「介護問題」の本質とは、自分の、自分たちの生活や人生とどう向き合うかということだ。
また「生きる」ということをあらためて考えさせられる。
考えてもみなかった肉親である弟との信頼関係も揺らぐ。
東京に住む私にはなにもできない、何もしていないという事実だけがある。
どんなに励ましの言葉をかけようが、感謝の気持ちを伝えようが、意味をなさない。
実家で日々起こっている現実にリアリティがないのだから。
知人からは「それは仕方ないこと、弟くんもわかっているよ」と言われる。

「母親の介護は、僕らに突きつけられた矢のようだと思う。
どう耐えるか、何ができるか、自分の全てが問われている。
兄貴には、 母との同居を代わってくれ、なんか毛頭言うつもりはない。
僕は僕で懸命に、この現実に耐えようと思う。
兄貴は兄貴で、何ができるか、真剣で考えてください。
そうしないと、僕が貴方を見限ります。」

弟が私に送ってきたメールだ。(原文のまま)

このメールに返す言葉はない。
あるとすれば、言葉でなく行動だ。弟は、私に期待も諦めもしていないだろう。
「あなたは人としてどうするのですか?」と
兄弟の距離でも他人の距離でもない関係で私に問いかけている。仕方ない、では済まされない。

以前は母親と私、親子の関係性の中で母親に何をしてやれるのだろうかとばかり考えていた。
けれど今はそんな単純なことでない。
自分の人生とは? 弟の人生とは? 家族の人生とは? そして、何より「介護」とはなんだろう?
こんなことは、私だけに降りかかっていることではない。
周囲にも似たような話をよく耳にする。読者の皆様の中にもきっといらっしゃるだろう。

私が祖父や祖母を見送った30年ほど前は、「介護」という言葉はなかった。
死ぬことを惜しんだ。もっと長生きをすることを望んでいた。
けれど女性の平均寿命が87歳の現在において、
長生きすることが本人や家族や周辺の人達にとってほんとうに幸せなことなのだろうか?

「もう充分生きた、これ以上みんなに迷惑をかけたくない、あなたたちは、自分の人生を生きて欲しい」

帰省の度に、母親が口にする言葉だ。
そして最後は「死ねないのが不幸だ。」と涙ながらに言う。
本人の矜持を痛いほどわかる。
本人をはじめ周囲のみんなが苦しんで耐えている。
与えられた「生きる」試練なのか、自問自答する日々だ。


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スライド12  wrote by ランシン ブログランキング・にほんブログ村へ ブログランキング

この記事へのコメント

- yukie3 - 2015年05月12日 07:21:39

こんにちは。

死ねないのが不幸だ、先日亡くなった私の祖母も申していました。
親族同士の揉め事も勃発しました。

嫁は他人なのだから、介護は実子が先に立つ、
これが今の世の中の流れなのですね。

本当に本当に、難しい問題ですね。


気の利いたコメントでなくてすみません。
ただただ、少子高齢化の大きすぎる壁を実感せざるを得ないと思いました。

- mayumi-pf - 2015年05月12日 08:04:36

介護問題はホントに大変な問題ですよね
うちは旦那が男3兄弟でみんな親の近所に住んでいます
母親が95で一人暮らしをしていましたが
さすがに無理だってことになり
かといって誰も同居しようとは言わず
介護付き高齢者マンションに入居しました
まとまった入居金はいらず
毎月の家賃と実費、介護費だけです
彼女の年金と、足りない所は3兄弟で分けて払ってます
まあお金で解決ってところですかね~

- うさまゆ - 2015年05月12日 12:32:50

本当に、言葉では尽くせぬ非常に難しくデリケートな問題です、ね。
うちも、独りになった母親が次第に弱り。
経過は端折りますが、現在ケアホームにお世話になっています。

まだ若かった頃からの親子関係も絡まり、姉、私、色々色々大変でした。
極限で辛辣な言葉を吐かれた事もありました。
それぞれの事情を総合し、外部に面倒を看て頂くという判断は間違いでなかったと思います。
間違いなく、身内だけでなんとかしようとしたら総潰れしていたはずです。
親戚からも随分言われましたが、これで良かったと思っています。

母親、78歳。
痴呆が恐らく進んでおり、移動するなら車椅子、嚥下力も低下し離乳食のような食事を他人に食べさせられ、眠る時間の長い毎日。
何を思っているのか、果たして思うことが出来ているのか…
それさえ確たる事実は分かりません。
でも、母親も姉も私もそれぞれの伴侶も、時間は過ぎていきます。
生きていかにゃなりません。
本当にシンドイくていらっしゃると思います、
どうか、ベストでなくてもベターな方向に進まれますように。
陰なから祈っております。

- SANAE - 2015年05月13日 13:06:44

私も15年程前に主人の母の介護経験ありです。
母1人子1人の所へ嫁ぎ、介護するのは私のみでした。中学生の息子も時々手伝ってくれたり。途中で主人も脊柱間狭窄症になり40代で寝たきりになり、2人の介護生活は大変でした。嫁の立場では、ここから先は言えないと言う事もあり、辛い事も多々ありました。本人も辛いですが、介護する方は365日気が休まる事はありません。精神的に疲れ果て......。
弟さんの奥様が、心配です。

- - 2015年05月13日 17:10:12

皆様

いろいろご意見ありがとうございます。
ほんと、大変ですね。
今は相続の問題で弟と修羅場の話し合いをしてます。
ほんと、嫌になります。

- 宝香 - 2015年05月14日 12:31:17

旦那の兄弟も私の姉妹も親の介護と相続の過程で仲がこじれ、お互い長年我慢してきた感情がむき出しになり、修復不可能になりました。冠婚葬祭には嫌でも会わずにはいられない親戚ではありますが、親が死んでしまえば、ハイそれまでよ。家族ってなんだろう、と思わずにはいられません。

- - 2015年05月15日 06:34:05

宝香様
どうもありがとうございます。まさに私もそのギリギリの状況にいます。
修復のめどはたってません。そもそも感情がでた瞬間が、関係終了なのかも知れないと思う日々です。まさに同様の気持ちです。

長文になって(^_^;)ごめんなさい。e-ru - てのりぱんだ - 2015年05月16日 01:02:52

親の立場からいえば、自分のことで、一番大切な子供たちに迷惑や苦労をかけたくない、時間も奪いたくない、ましてや、愛した二人の息子同士が自分のことで喧嘩をするなんて、死ぬことより辛いと思うと思います、誰だって。自分の存在がなんだったのか、最期に来て(失礼な表現、お許しください。一般論です。)自分の存在がうらめしく、せっかく長年生きてきたことが、自分の存在が、自分の価値が、自分のなかで否定されます。
ただ、そういうこと(存在否定)を考えると怖いこと(自ら死を選びかねないこと)なので、または、死を迎えるのも本能的にこわいので、人は痴ほう症、いわゆるボケるという神様からのおくりものがあるのだそうです。

親の気持ちを考えたら、兄弟でモメルのは絶対避けたいですね。こういう問題は突き詰めたら、つまりはいつも「お金」のこと。
もう、仏教の教えのように、「無」になることしかないです。とおもうのです。
お金もなかったとおもい、兄弟も、もともといなかったと思い、しょせんは自分ひとり。
自分はいったいどうしたいのか、ということだと思うのです。

ただ実際介護や、看病する側は、医療費以外の見えないお金がびゅんびゅん出ていきます。(経験済みなのですが。)
施設や病院に通うだけでも、交通費がいり、それ以外にパートを休んで収入に響いたり、いつもなら作っているご飯も作れず店屋物を買い高くついたり、外食せざるを得ない日が増えたり、と見えない細かなお金が出ます。
1か月の支出が大きく増えます。
家族代表として医者や、介護職の人話をきくと神経がすりへって、どっと疲れ内科や整骨院にいき、自分の医療費も出ます。私は医者の話が怖くて毎回きいていたら、半年たったころ、がん検査をしました。(大丈夫でしたが。)

だから、まずは、離れている方は、親についている方(兄弟)に、お金を送るといいと思います。誠意をみせるのは、これしかないです。口で言っても(それも、もちろんまずいりますが)、いつもありがとうという気持ちはあっても、お金が必要です。兄弟が裕福な方でも、関係ないです、誠意を見せるのに、形がないと伝わらないので、それは、
プレゼントではなく、お金。毎月「交通費にしてください」「おむつ代にしてください。」と
送るといいのではないでしょうか。
(いろんなご事情があり一概に言えませんが、一般的には。)

正直、お金で済む方が楽です。送りたくてもないんだ、という場合でも、バイトして稼いででも、お金を送る方がまだ、肉体的にも、精神的にも楽、ではないかしら?
楽をえらべというわけではないけど、そう思った方がお金を兄弟に送りやすいでしょう。

そして親にはいつも感謝して、自分が会いたいなら行く・・・。
母のおかげで自分は存在し、妻、子どもと会えた、と感謝したら、楽です。

もめて自分が胃でも痛めて入院したらばかばかしいです。遺産を手にしても、むなしさが残るのでは・・・。

・・・・・・などと、日々、私は考えております。こういうこと、今までも、やってきて、これからも、来ますので。
実は兄弟は父の財産を全部管理していますが、私になにも、見せないし、言ってきません。
私はないものと思うことにしました。そして、兄弟もいなかったと思うことにしました。よその、親切な方です。わたしの父の管理をし、ときどき見舞に行ってくれるよそ様です。いっしょに遊んだ思い出があるのでいいです。
もめる労力がもったいないです。もめたら私が病気になるような気がするのです。
私にはこっちにだいじな家族がいます。
うちが余裕があるとかでなく、その逆ですが、だから、パートを始めました。

あす、父のところへいこう、と、このコメントをかきながらおもいました。

すごーく長くなって・・・・はずかしいです~。ごめんなさい。
自分の心の整理になりました。ありがとうございます。

テレビでは、「家族の絆、絆っていいすぎや~」とよく思ってます。^^

- ふーみん - 2015年05月23日 12:18:47

皆様、もうよくおわかりになっていらっしゃる方達のコメントですね。
私もきれいごとではなく、結局はお金だと思います。

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