続々・3月の読書。「フラニーとズーイ」「満月、空に満月」「さらば雑司ヶ谷」。
前回のブログで訂正を入れつつ、大切なのはタイトルではなく“文体”を主体とした本文なので、
タイトルは引き続き“3月の読書”です。
これまでの二冊は、サリンジャー&村上春樹や海老沢泰久&井上陽水と、
比較的メジャーなキー・ワードによる作品でした。
ところが最後に登場するのは1971年生まれの樋口毅宏が初めて書いた小説。
しかもタイトルは「さらば雑司が谷」。
ちなみに雑司が谷って何処かご存知ですか?
実は玉下も全くこの作家の事は知らなかったんですが、読書や映画鑑賞の傾向が似ている方から勧められたんです。
今回のブログで伝えたいのは(繰り返しますが)文体なので、作者に関してはサラッと紹介します。
彼は正に雑司ケ谷で生まれた作家です。(ちなみに東京都豊島区にあります)
でも作家と言ってもデビューは38歳。それまでは雑誌の編集者で、むしろ作家に書いてもらう立場。
ところが彼のユニークな経歴は、学生時代にそれまでに発表されていた芥川賞受賞作を読破した事。
その中には候補作までも何冊か含まれており、そこで気づいたのが、
“40歳を過ぎないと、かっちりした文体はできない”ということ。
つまり彼は自分の文体がかっちりする前に、自覚的に作家として処女作「さらば雑司ヶ谷」を書き上げ、
直木賞作家の白石一文の推薦で新潮社から発刊されたのです。
この小説。では内容は…、ストーリーは…、と問われると答えようがない。
もちろんあらすじを書けば書けるけど、そこに何らかの教訓とかメッセージは感じなかった。
「フラニーとズーイ」はもとより、「満月、空に満月」よりも遥かに速く読めたのは、正に文体の成せる技だったと思う。
言語感覚、スピード、否定的な意味ではなく軽薄な表現。そして様々な引用。
そう、作者は芥川賞受賞作を読破しただけではなく、古今東西のコミックや映画にも精通している。
それもある作家を好きになると徹底的に観たり読んだりしたくなるという。
そしてそういう作品のプロットやセリフを自身の小説に堂々と引用して、後書きにその出典を羅列するのである。
場合によっては読者がその後書きに答え合わせをしたり、彼の作品を契機に元ネタを遡れる。
従って、ある意味ではストーリー以上に小説のスタイル=文体が魅力的になってしまうのである。
さて、こうしてブログを書いている間にまた一冊、Amazonから本が届いた。
村上春樹、9年ぶりの短編集。「女のいない男たち」である。
果たして玉下はこの小説にどう接するのか。
ワクワクしながらページをめくろう。
【本日の一曲】 「東へ西へ」by 井上陽水
先の書籍「満月 空に満月」のタイトルになった歌詞が入っている、
井上陽水の代表曲のひとつ。相変わらず、詞が面白い。
■3月の読書。「フラニーとズーイ」「満月、空に満月」「さらば雑司ヶ谷」。
■3月の読書。「フラニーとズーイ」の続き…。文体。
■続・3月の読書。「フラニーとズーイ」「満月、空に満月」「さらば雑司ヶ谷」。
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東へ西へ - 桃千佳 - 2014年04月26日 03:29:50
「東へ西へ」ってモックンも歌ってましたよね。
歌詞まで同じだったのか覚えていませんけど
陽水さんのほうが断然いいですね。